2003年に有形文化財に登録された、栃木県那珂川町馬頭にあるホテル「飯塚邸」。その名の通り、江戸時代の大庄屋を務めた飯塚家の建物をリノベーションした、歴史がありながらも新しい風情あふれる素敵な貸別荘です。
重厚な門や敷地内にある4つ建物は約200年前の江戸時代から明治時代にかけて建てられ、2015年に飯塚家から那珂川町に寄贈、その後リノベーションして2019年にオープンされました。“本当の日本のライフスタイルの提供”をコンセプトとしていて、町で暮らす人々との交流を楽しみながら過ごすことで、旅の思い出がより濃く温かいものになる飯塚邸の魅力をご紹介していきます。
【飯塚邸】
栃木県/那珂川町
定員 | 1~5名 |
宿泊費 | 35,200円~ |
チェックイン | 15:00~19:00 |
チェックアウト | 11:00 |
連絡先 | 0287-82-7551 |
住所 | 栃木県那須郡那珂川町馬頭360 |
設備 | ・wi-fi〇 ・駐車場〇 |
【ご予約はこちら】
飯塚邸のある那珂川町馬頭ってどんなところ?
那珂川町(なかがわまち)は、栃木県の北東部に位置する人口約1万8千人の小さな町で、町の中央を流れる那珂川は天然鮎で有名です。飯塚邸がある馬頭(ばとう)という地域は、昔は北海道に次ぐ2番目に有名な馬の売買がされていた場所だったそう。飯塚邸の正門前の道はそのメイン通りだったとのこと。当時のなごりが「肥料店」の看板で残っていたり、飯塚邸のとなりにある「とりよし」さんでは馬刺しを買うことができます。
こんなところにホテルが!? 住宅地にある飯塚邸へのアクセス
田舎にあるホテルのため、東京駅から電車とバスを乗り継いで約3時間。宇都宮市から車なら約1時間です。今回は東京駅から新幹線で宇都宮駅まで約50分、宇都宮駅からレンタカーで約1時間でした。2019年にできたホテルのため、古いナビだと施設名や電話番号で検索しても出てきません。住所で検索することをおすすめします。(栃木県那珂川町馬頭360)
馬頭温泉郷から少し離れた住宅地にあり、到着するまではホテルがあるのか心配になりますが、江戸時代の大庄屋を務めた飯塚家の存在感がきわだつような広大な敷地と重厚なつくりで、前を通ればすぐに気づくことがきます。
駐車場へはホテル裏側の門から入ります。郵便局が飯塚邸に挟まれた形で建っていることに驚きつつも、到着した安心感と立派な門構えにわくわく感がかきたてられます。
事前におおよその到着時刻と車で向かうことを電話でお伝えしていたため、門から入るとすぐに出迎えていただきました。お電話で対応してくださったままの心地よいお心遣いと声色。はじめから名前で呼んでくださり、パラパラと小雨が降っていたため傘をさしてくださったまま、すぐにお部屋に案内していただきました。
飯塚邸の外観と設備紹介
思わずテンションが上がる重厚な外観
今回宿泊したのは、蔵を丸々リノベーションしたロフト式の「蔵の部屋」の中でも1番人気という文庫蔵。正門から一番奥にあり、裏門の駐車場から一番近く、他のお部屋から少し離れて独立しているため特別感があります。重要な文書や金品をしまっておくために作られた蔵というだけあって、見るからに重厚です。
6つの異なるお部屋の種類と宿泊プラン
敷地内には「蔵の部屋」が3つ、「邸の部屋」が3つの計6部屋があります。1棟丸々借りられるのは「蔵の部屋」の文庫蔵と、「邸の部屋」の本宅。残りの4つのお部屋、「蔵の部屋」の土蔵Aと土蔵B、「邸の部屋」の新宅Aと新宅Bは、ひとつの建物をふたつに分けた作りになっています。
<飯塚邸の6つのお部屋>
宿泊料金は標準プランで1名16,500円からとなっており、標準宿泊プランは朝食付き2名1室利用時の料金です。もっとお得に泊まりたい場合は部屋貸しプランがおすすめ。定員数までの1室料金になり、3泊以上するとさらにお得になります。
料金表 | 標準宿泊プラン | 部屋貸しプラン |
---|---|---|
蔵の部屋 (文庫蔵、土蔵A、土蔵B) | 16,500円~ | 35,200円~ (定員1~3名) |
邸の部屋 (本宅、新宅A、新宅B) | 26,400円~ | 55,000円~ (定員2~5名) ※本宅のみ2~4名 |
備考 | 朝食付き1名の料金 | 食事なし1部屋の料金 |
有形文化財の中にある最新式設備
いざ室内へ入る際に驚いたのが、タッチパネルでオートロック式の鍵。ドアは分厚い木製の引き戸のため、歴史と最新の技術が融合されていて不思議な気持ちになります。江戸時代に建てられた歴史ある邸宅というイメージからは想像もしていませんでしたが、鍵を持ち歩かなくていいのはとても便利です。
暗証番号と使い方は、お部屋へご案内いただいた際におしえていただけます。もちろん暗証番号が記載された紙もいただけるので安心です。内側から開ける際は解除ボタンを押すだけで楽々。
また、Wi-Fiも完備されていて仕事をするにも問題ない快適さでした。お部屋にはiPadが1台あり、家電の使い方などはメモに記載されています。フロントへの電話もiPadからかけることが可能です。
いざ大人の秘密基地「文庫蔵」へ
扉を開ければ、“大人の秘密基地”と呼ぶ方が多いという空間が広がっています。1階からご紹介したいところですが、ここは秘密基地のわくわく感を感じる階段と2階からご紹介させてください。
大人がひとり昇り降りできる幅の階段をのぼれば、屋根裏のような雰囲気がありつつも広々として天井の高いロフト空間が広がります。2つ並んだシモンズ製のベッドに、テーブルの上には懐かしい絵本が2冊。久しぶりに読む絵本でさらに童心に帰るようです。
ソファーの上には浴衣と靴下の用意もありました。浴衣を着て玄関の草履を履き、蔵の前や敷地内で写真を撮れば江戸時代にタイムスリップしたような写真も撮れそう。蔵のため窓は玄関の上にあるひとつだけなのですが、朝は光が窓からたっぷりと差し込み、暗さを全く感じませんでした。天井が本当に高いため圧迫感もなく、ベッドに寝転ぶと立派な梁と、建てられた当時のままという文字が目に入ります。
1階は居心地のよい生活空間
1階にはテレビとソファのあるリビングと小さなキッチン、奥に水回りがまとまっています。テレビの横がキッチンで、IHの一口コンロや電子レンジなどの家電類があり、テレビ台の下に調理器具や食器がそろっています。電子レンジの横に調味料もありました。
また地元のお茶やコーヒー豆、紅茶がありどれもおいしかったです。コーヒーは豆を挽いてからドリップするため、香りが部屋に広がり心地よいコーヒータイムを過ごすことができます。コーヒーメーカーは使ったことがないタイプだったため、早速iPadのメモにある説明書にお世話になりました。
地元の魅力がたっぷり詰まったウェルカムプレート
冷蔵庫にはフルーツや有機野菜がたっぷりのウェルカムプレートとドリンクが用意されていました。ウェルカムプレートがここまでたっぷりなのは初めてかもしれません。お野菜につける地元のお味噌もおいしく、夕食に出かける前のおやつに、晩酌にもってこいです。
ドリンクは、湧き水・オレンジジュース・栃木県でしか飲めない牛乳の3種類。おいしい牛乳は、もちろんコーヒーにも入れて楽しみました。そしてさらに、町の中にある菓子店の焼ドーナツまで。フルーツ入りのパウンドケーキのようなふわふわ食感でおいしかったです。
町が一体となったホテルのような、充実のまち歩きマップ
ウェルプレートのドーナツが気に入ったら、チェックイン時にいただける「馬頭お楽しみ券」でお得に買うこともできます。1人500円引きになるお得なクーポンで、裏に記載してあるお店でチェックアウトの日までに使うことができます。お店の場所はお部屋に置いてあるまち歩きマップですぐに確認できますよ。
町が一体となったホテルというだけあり、まち歩きマップがとても充実しています。裏面にはサイクリングマップもあり、こんなに細かく記載されているマップはなかなかないのではないでしょうか。
ちなみにサイクリングがしたくなったら、駐車場にある建物で無料で借りることができます。無料というのも嬉しい上に、自転車は電動アシスト付きのクロスバイクという本格派。入口にある看板で、貸し出し状況が確認できるのも便利です。
気になる水回りやアメニティ
リビングと水回りは、引き戸を閉めて空間を分けることも可能です。お風呂には栃木県で採掘される大谷石が使われているそう。細かいところにも栃木愛を感じます。広々した湯船にはボタンひとつでお湯をためることができ、追い炊き機能もありました。シャワーはハンドシャワーだけでなく、上からふってくるオーバーヘッドシャワーもついています。シャンプー・コンディショナー・ボディソープは備え付けでDHCのもの。タオルとドライヤーは洗面台の下の引き出しに入っています。
その他アメニティは、ヘアバンド、ブラシ、かみそり、コットンと綿棒、歯ブラシと歯磨き粉と最低限のものがそろっていました。スキンケア類はないため、持って行くか近くのコンビニや化粧品店で購入しましょう。コンビニは歩いて5分ほど、飯塚邸のある通りには化粧品屋さんもありますが18時頃には閉まっていたのでご注意ください。
【ご予約はこちら】
飯塚邸の周辺情報
夕食は町で人気の居酒屋「のびろ」で食も交流も堪能
飯塚邸に夕食付きの宿泊プランはないため、自炊かケータリング、外に食べに行くの3択になります。
- 自炊:まち歩きマップの食料品店か、車で5分ほどの「道の駅ばとう」で食材を調達
- ケータリング:ホテルの方と相談して、名物をお部屋でゆっくり堪能
- 食べに行く:まち歩きマップを見て探索するか、ホテルの方におすすめを伺う
地元の方のスーパー変わりにもなっていた「道の駅ばとう」には、新鮮な野菜等はもちろん冷凍餃子もあり、お部屋で餃子を楽しむのもいいですね。ただお部屋にお酢とラー油はなかったため、餃子を買う際はタレがついているかご確認を忘れずに。
今回は外で食べたかったので、おすすめの飲食店をホテルの方に伺いました。お酒を飲むことを伝えると、真っ先におすすめしてくださったのがまち歩きマップ右端の「のびろ」。
「のびろ」は飯塚邸から歩いて15分ほどですが、車で送っていただけるとのこと。町を歩きたかったので遠慮しましたがいつも送ってくれるそうです。また帰りはのびろさんも車で送ってくださると思う、というホテルの方のお言葉通り、お会計をした際にのびろのご亭主からも送りましょうかとお声がけいただきました。お子様連れなどには嬉しい心配りです。
18時過ぎに歩いて向かいましたが街灯が少なくて暗く、住宅地を歩くのでこれまたこんなところにお店があるのか心配になりましたが光る看板を無事みつけました。ほぼ飯塚邸からまっすぐで迷わず行けます。
「のびろ」は、人気店なうえに24時まで営業されているとのこと。地域柄、飲食店が早く閉まると思っていたので嬉しい誤算でした。すぐに電話で問い合わせてくださり、スムーズに来店することができました。ホテルの方々も利用する居酒屋さんのようで、お電話でもホテルと町の交流が密なことが垣間見えます。
「ホンモロコ」というお魚が地元で有名と伺い、はじめていただいたところ身がふわふわでおいしかったです。コイ科の小魚で関西では高級魚として扱われているようですが、馬頭高校水産科で養殖が成功し特産品になったようです。のびろはメニューが豊富で、その他のお料理も全ておいしく大満足。たくさんお酒を飲むせいか、高原大根や自家製梅干しをサービスしていただきました。
ご店主は栃木県の自然の中、山菜取りやキノコ狩りも趣味とのことで、ぜひ春に山菜を食べて欲しいとのこと。親しみやすい人柄で、ホテルの方が「のびろ目当てで宿泊される方もいらっしゃる」と言っていたのがよくわかります。
途中でブレーカーが落ちるハプニングがあり、それがきっかけでお隣に座っていた地元の方々とお話もできました。ゴルフが好きならおすすめは「うぐいすの森ゴルフクラブ」、「馬頭ゴルフクラブ」、日本女子オープンゴルフ開催コースもある「烏山城カントリークラブ」、「ジュンクラシックカントリークラブ」で、全て安くまわれるとのこと。ラウンドしてからのびろで食事、飯塚邸に宿泊は最高のコースかもしれません。
飯塚邸の「100万円のベッド!」って?
地元の方々に「どこに泊まっているの?」と聞かれ、「飯塚邸です」と答えると、「いいところだね、100万円のベッド!」という不思議なコメントが皆さんから返ってきました。シモンズのベッドなのでそのような返しがきたのかと思いきや、ホテルの方いわくオープン当時に栃木県のローカルテレビのロケでお笑い芸人のカミナリさんに取材いただき、「100万円のベッド!」とカミナリさんが言った言葉が地元の方々の印象に強く残っているとのこと。地元の方にとって飯塚家は昔から身近な存在のため、有形文化財よりもベッドのほうが印象強かったのかもしれません。
のびろさんを堪能した後も、暗い道を歩いて帰りました。シンと静かな空気の中、飯塚邸のライトアップが幻想的で美しかったです。
ゆったりとした朝の時間とおすすめ宿泊情報
和朝食をお部屋で心ゆくまで堪能
寝心地最高な100万円のベッドでゆっくり休んだ翌朝は、朝食付きのプランだったためお部屋で朝食をいただきました。朝食の時間はチェックイン時に8時、8時半、9時から選ぶことができます。朝食も地元のお店からのケータリングで、今回は那珂川近くの「御前岩物産センター」さんの和食です。
3段のおかずの他に、お味噌汁とごはん。ごはんは2合ほど入った炊飯ジャーごともってきていただけます。優しい味で全部おいしかったです。特に那珂川町産のゆばどうふが好きでした。
地元の方おすすめの美人湯
チェックアウトの11時までお部屋でのんびり過ごした後、前日にのびろさんで町の方々におすすめいただいた“とろとろ、つるつる”という「ゆりがねの湯」に伺いました。飯塚邸からは車で15分ほどで、なんと大人500円という銭湯価格。別途タオル代は200円です。
平日のお昼ごろだったからかお客さんはほぼ地元の方で、タオルやスキンケア等持参していました。“とろとろ、つるつる”と伺っていた通り、お湯はとろとろ、お肌はすべすべ、さらに那珂川を眺めながら入れるロケーションが最高です。内湯と露天風呂の2つの浴槽のみのシンプルな日帰り温泉ですが、受付のおじさまも笑顔が素敵で、休憩ルームも広く、レストランもあるので地元の方々に愛されるのがわかります。
連泊して楽しみたいアクティビティ
温泉の他にも、ホテル周辺には3つの美術館や、栃木県ゆいいつの水族館・なかがわ水遊園、小砂焼の陶芸体験もできる藤田製陶所などがあります。宇都宮で餃子を食べるついでに、那須で観光したついでに宿泊される方も多いそうですが、那珂川町のみでも十分に楽しめます。
その他にもホテルで事前に申し込みができるジビエの罠を仕掛けるところから食べるところまで楽しめる体験ツアーや、自転車でクラフトビール工場へ行くツアーなどもありますので、迷ったらホテルの方に相談してみてください。親身になって提案していただけますよ。
飯塚邸では心地よいおもてなしと空間を、町の人々にも温かく迎えていただき、とても素敵な時間を過ごすことができました。オープンしたての頃に香港や台湾でPRし海外のお客様も見込んでいたそうですが、すぐコロナ渦になり今のところ日本人のお客様が大半のようです。でも日本の歴史ある建物に宿泊できるとあれば、今後海外のお客様も増えていくこと必至です。
にぎやかな旅行というよりも、日常がちょっと特別になるような、心がほっと温かくなる飯塚邸での宿泊。町のみなさんの栃木愛を全身で感じて、栃木が好きになってしまいました。みなさんも体験してみてはいかがでしょうか。
【ご予約はこちら】