紅葉が終わりをむかえる12月初旬、岡山県の倉敷市・倉敷美観地区内にある「暮らしの宿 てまり」を予約し宿泊してきました。「暮らしの宿 てまり」は、たくさんのもので溢れている現代において、手作りの品を手に取ったり、感じたりして、日々の暮らしの中で本当に大切なものを振り返ってもらえたら、という思いからつくられた貸別荘です。
古民家をリノベーションしているので、昔の懐かしさもありつつ、全体的に綺麗なつくりとなっています。宿には、器やグラス、絵本、机など、すべて手作りで一つ一つ造られたものばかり。そんな素敵なものに囲まれた宿で過ごし、その後の暮らしも少し豊かになってもらえればと考えられ、倉敷市の美観地区に「暮らしの宿 てまり」をオープンされました。
【暮らしの宿 てまり ゆきかい】
岡山県/倉敷市
定員 | 1~3名 |
宿泊費 | 28,600円~ |
チェックイン | 15:00~18:00 |
チェックアウト | 10:00 |
連絡先 | 086-486-2225 |
住所 | 岡山県倉敷市本町2-15 |
設備 | ・wi-fi〇 ・駐車場〇 |
【ご予約はこちら(ゆきかい)】
倉敷の美観地区とはどんなところ?
倉敷美観地区は、現在、岡山県の代表する観光名所に一つとなっています。倉敷は江戸時代に幕府の直轄領「天領」となり、物資の集積地としてとても栄えるようになりました。そして川沿いには、塗屋造りの町家や白壁土蔵造りの町並みがつくられていきました。
江戸の風景を未来に残そうと美観地区一体が保存地区に指定され、昔のままの風景が残った魅力ある場所となっているのです。そんな昔のものを残しつつ、ギャラリーや雑貨店、古民家カフェなども加わり、古い歴史文化の中に新しいセンスやモダニズムが調和しているのが倉敷美観地区なのです。
倉敷美観地区の中でも、美観地区を象徴する場所となっているのが倉敷川畔です。倉敷川に沿って立ち並ぶ柳並木と白壁の土蔵、近代的な建築物などが風景に溶け込んだこの場所は、連日観光客で賑わっています。
「暮らしの宿 てまり ゆきかい」までのアクセス
「暮らしの宿 てまり」には、「ゆきかい」と「おいとま」の2つの宿があります。どちらも倉敷にありますが、今回は美観地区の中心地にある「ゆきかい」に宿泊しました。
「ゆきかい」は、岡山駅から電車で20分程度の距離にある倉敷駅が最寄駅となります。宿までは、そこから倉敷美観地区方面へ10分程度歩けば到着です。駅から歩ける距離にあるため、電車で訪れるのが一番便利かと思います。宿には無料駐車場が1台分あり、車で行くことも可能です。利用する際は予約時に伝えておきましょう。
倉敷駅を背に少し歩くと、美観地区と呼ばれるエリアに入ります。美観地区に入ると、一気にレトロかつモダンな街並みが広がります。日曜日のお昼だったこともあり、多くの観光客で賑わっていました。美観地区の街並みを楽しみながら歩いているとあっという間に宿に到着します。
チェックイン時の素敵なおもてなし
宿泊施設のチェックインは15時。宿泊当日にチェックインの確認のメールがありました。少し美観地区を散策したのち、15時ごろにチェックインをするため、宿の一階にある「美観堂」と呼ばれるセレクトショップの受付へ向かいました。
美観堂は、今回の宿と同じ代表の方が経営されているお店で、岡山・倉敷のこだわりの器や工芸品などを置いています。とてもかわいい形のカップを見つけ、つい欲しくなってしまいました。見ているだけでも楽しめる、そんな空間でした。
お店の方に声をかけると、チェックイン時の確認メールをくださった女性の方が二階の宿へ案内してくださいました。施設の利用説明と、施設のこだわりポイント、周辺のおすすめ飲食店などを丁寧にお話ししてくださりました。
一通り手続きを終えた後、美観地区の風景をぜひ椅子に座って眺めてみてくださいと勧められ、窓際の椅子に座って眺めていると、ウェルカムドリンクとオリジナルの焼き菓子を用意してくだいました。ウェルカムドリンクは、岡山県産の桃を1年中楽しんでもらえるようにと開発された88%が桃でできた超濃厚な桃ジュースでした。桃の甘さと濃厚さを感じられるジュースはとても美味しかったです。
また、注いでくださったグラスも普通のグラスではなく、桃の形をしていました。知り合いの職人さんが作っているものだそうで、見て楽しむこともできました。桃のジュースと焼き菓子をゆっくりいただきながら、美観地区を行き交う人々を眺め、チェックイン直後から贅沢な時間を過ごすことができました。おもてなしが素敵なお宿はやはり嬉しいですね。
様々な用途で活躍をする美観地区の便利宿
「暮らしの宿 てまり」は、私が今回泊まった美観地区の中心にある「ゆきかい」と、美観地区のはずれに「おいとま」という宿があります。2棟ともも1日1組限定のお宿で、完全プライベートな時間を過ごすことができます。
土曜日や大型連休はとても人気で、すぐに予約が埋まってしまっています。予定が立ったら、すぐに予約をしておくことをおすすめします。
「暮らしの宿 てまり」2種類の貸別荘
ゆきかい | おいとま | |
---|---|---|
イメージ | ||
平日宿泊費 | 約28,000円 | 約47,000円 |
土日祝前日 | 約35,000円 | 約70,000円 |
定員 | 最大4名 | 最大9名 |
使用用途 | ひとり旅、カップル向け | グループ、家族向け |
古民家をリノベーションして造られた「ゆきかい」
「ゆきかい」は、美観地区に古くからある旧土屋邸という古民家をリノベーションして誕生しました。「岡山・倉敷のほんとうにいいものを」コンセプトにしたセレクトショップ美観堂と、地元の食材を使った古民家カフェ有鄰庵の間が宿への入口になります。入口の感じも古民家の作りならではです。
奥に入っていくと、「暮らしの宿 てまり」とかかれた暖簾のかかったドアがあるので、そこを入ります。ドアを開けて入った先は細い道になっており、入ってすぐ右側が2階に上がる扉、左奥の扉がトイレと洗面所、お風呂になっています。
部屋に入る前にも、こだわりが。暖簾をくぐった先には、焼杉という伝統技法が使われた真っ黒な壁面がありました。杉板の表面を焼き焦がすことで、耐久性と防腐が増すそうです。こうした伝統技法に触れることのできるのは、古民家のお宿ならではかと思います。
一階にあるお風呂にも、古民家ならではの体験ができるお風呂です。江戸時代によくあった「五右衛門風呂」と呼ばれるお風呂に入ることができるのです。「五右衛門風呂」とは、鋳物(鉄)できた浴槽のことです。鋳物(鉄)のつくりのため遠赤効果が加わって、お湯がまろやかになり、体の芯からポカポカになるのだといいます。冬の旅行にはとても嬉しいですね。
なかなか江戸時代にあった五右衛門風呂に入るという体験はなかなかできるものではありません。この宿ならではの魅力だと思いました。五右衛門風呂に入ることを楽しみに、今度は2階へと案内されました。
2階へ続く扉を開くと、すぐ階段があります。階段を登ると、木材や畳の温かさを感じるお部屋が広がります。入ってすぐに2畳ほどの板の間があり、その横に和室6畳の部屋が2部屋が襖で仕切られているつくりでした。美観地区側の和室には、美観地区を眺められるようにと窓際に机と椅子が並んでいます。
奥には手作りの器やお皿、グラス、絵本などが素敵に並べられています。そして部屋の中央に、これまた手作りの温かみを感じられるちゃぶ台と、クッションが2つ置いてあります。お部屋全体は、古民家ということで木の暖かいベージュを基調としたお部屋なのですが、椅子のオレンジ色、クッションの淡いブルーとピンクがうまくお部屋の感じと合わさっていて、落ち着く空間でありながら、可愛らしさを感じる空間でもありました。
板の間にある棚の上には、ポットやカップなどが用意されています。隣の和室は寝室となっていて、すでにお布団を敷いていてくださっていました。
【ご予約はこちら(ゆきかい)】
倉敷美観地区の中心地に泊まれるからこそしたいこと
この施設の最大の魅力は、倉敷美観地区の中心地に宿泊ができることではないかと思います。美観地区に宿泊しているからこそしたいことをお伝えします。
1. 二階の椅子に座って、美観地区を行き交う人をゆったり眺める
美観地区には人気カフェや雑貨屋さんなどが多くあり、休日のランチ時にはたくさんの人で賑わっています。そんな様子を客観的に美観地区内にある建物の二階から見られるなんてそうできるものではありません。さまざまな人の行き交う様子を観るのはなかなか面白いものですよ。
2. 夜の美観地区を堪能する
日帰りで帰る人も多い美観地区で、宿泊をし帰宅時間を気にせず過ごせる夜はとても贅沢なひとときです。昼と夜の美観地区の雰囲気は、驚くほどガラリと変わります。お店は段々閉まっていき、空が暗くなってくる頃、美観地区には街灯がつき始めます。優しいオレンジ色の灯りと街との雰囲気はとてもロマンチックです。
また、絶対に歩きたいのが、夜の倉敷川沿いです。建物や街灯などが川面に映る姿はとっても幻想的です。美観地区は景観条例が定められており、この美観地区の優しい光の照明は、世界的な照明デザイナーの石井幹子さんがプロデュースし、倉敷市の住民の協力によって始まりました。
3. 朝の日差しを浴びながら、美観地区をお散歩する
朝の美観地区は人気が少ないです。せっかくなので朝は少し早く起きて川沿いをお散歩してみるのはどうでしょう。朝の8時頃からオープンしているパン屋さんも近くにあるので、パンを買って川沿いのベンチで食べるのもいいですし、宿に帰って、コーヒーを淹れて美観地区を見ながら朝食にしても最高です。
美観地区の散策と素敵な夕飯との出会い
チェックインの後、宿で少しくつろぎ、美観地区を散策しました。お宿の人に教えていただいたマスキングテープ屋さんへ。マスキングテープは倉敷が発祥だそうです。有名なマスキングテープ屋さんが2店あるのですが、私は「TANE」という名前のお店に行ってみました。
店内の棚はマスキングテープで敷き詰められていました。カラフルなマスキングテープあり、見ているだけで楽しめるお店です。女性が多くいる印象でした。岡山限定の桃太郎マスキングテープも売っていましたので、文房具が好きな方はぜひ行くことをおすすめします。
ふらふら歩いているとおしゃれなお店、かわいいお店がいっぱいです。ミッフィーのパン屋さん、倉敷プリンのお店、金賞を受賞したコロッケ屋さんなど、食べ歩きをしても楽しそうです。宿の方からは、おすすめの焼き鳥屋やおでんの美味しいお店なども教えていただけますので、事前に予定を立てなくても時間を持て余すことなく楽しめそうです。
美観地区での夕食は予約が必須!
せっかくなので夕食は美観地区のお店でを食べたいと考えていましたが、宿泊日が日曜日であったため、定休日のお店がいくつかあり、残念ながらお目当てのお店に入れないことが多々ありました。営業日を確認し、事前に予約しておくのが一番良いかと思います。
私たちは結局、美観地区を外れ、商店街通りの海鮮が美味しいと口コミのあった海鮮居酒屋さんに行きました。瀬戸内海で採れたサワラを始め、サーモンや鯛、イクラなどの新鮮な海鮮をいただくことができました。お店を出るともう外は暗く、美観地区は明かりが灯っていて、とてもロマンチックでした。
こだわりアメニティと五右衛門風呂での入浴
「暮らしの宿 てまり ゆきかい」には、1階の洗面所スペースにアメニティが置かれてあります。洗面所に置かれていたのは、人数分の歯ブラシとボディスポンジ、コットン、綿棒。そして女性には嬉しい化粧水、乳液、洗顔、メイク落しも備わっていました。ブランドは「leaf and botanics」です。植物から得られるオイルやエキスなど、肌に優しい成分を使ったブランドです。
化粧水はオリーブ由来の保湿性にある成分と保水性に優れた成分を配合して作られていて、メイク落としは肌の潤いを守る純米酒と酒粕エキスを配合したクリームクレンジングになっています。そしてお風呂場には、同じく「leaf and botanics」のシャンプー、コンディショナー、ボディソープが置いてあります。ラベンダーの良い香りがして、香りに癒されました。
アメニティが全て同じブラントで統一されて置かれているのもよかったです。ドライヤーはパナソニック製品でした。風量は弱すぎることなく、使っていて問題ありませでした。個人的な感想としては、イオン機能などが付いたドライヤーだと更にポイントが高かったのですが、「暮らしの宿 てまり ゆきかい」のコンセプトには適していると感じました。
スキンケアのもの、特に洗顔とメイク落としは備わっていない施設が多い中で、一式揃っていたのはとても嬉しいポイントでした。タオルとルームウェアは2階の糸の間の棚に用意されています。タオルはバスタオルとフェイスタオルが1枚ずつ。ルームウェアはチェックイン時にサイズを聞かれ、お願いしたサイズのものを持ってきてくれます。
このルームウェアにも、お宿のこだわりがありました。倉敷市にはデニムの発祥の地とされる児島という場所があります。その技術を活かしてつくられたオリジナルのルームウェアです。生地は100%オーガニックコットン。
実際に着てみると、着心地に感動します。ずっと着ていたくなる、そんなルームウェアでした。ルームウェアを気に入った私たちは、室内にいる間はずっとそれを着ていました。また、朝のお散歩もルームウェアの上にコートを羽織って出かけました。心地よく過ごせるようにと考えられたサービスでとても嬉しかったです。
趣のある五右衛門風呂で身体の芯からポカポカに
夕飯から帰ってきた後は、寒い体を温めるため、五右衛門風呂に入りました。栓をして15分たったら大体お湯が溜まります。五右衛門風呂は足が伸ばせるというつくりではありませんが、大人一人が十分にリラックスできるお風呂です。深さがあり、体全体がお湯に浸かれます。
私は長いこと浸かっていられるので、割とのんびりと浸かっていましたが、お湯が冷めにくく温かさが続いていました。ただ、栓をしているところから少しずつお湯が流れてしまうので、お湯を足しながら入ります。ラベンダーの良い香りのシャンプーとボディソープで髪と体を洗い、さっぱりできました。
お風呂から上がると体はポカポカ!体の芯から温まったと感じられます。2階は暖房をつけていましたが、暖房の部屋に入ると暑いと感じるほどでした。朝も五右衛門風呂に浸かり、体を温めてからチェックアウトをしました。
今回は2人で宿泊したのですが、友人はチェックイン時/就寝前/起床後/チェックアウト前の計4回も五右衛門風呂を堪能していました。やはり同じく五右衛門風呂の凄さに感動したようで、家に五右衛門風呂が欲しいと言っていました。
美観地区の幻想的な夜と清々しい朝の風景を堪能
夜の静まった美観地区を眺めながらの晩酌
美観地区のお土産屋さんでまぐろの酒盗をゲット。せっかくなので器やグラスを使いたいと思い、日本酒とつまみを入れて、使わせていただきました。やはり食器が素敵だと、気分も上がります。しかもその食器が手作りのものだと尚更。真っ暗な人気のない美観地区に温かな灯りがともった外を見ながら、素敵なグラスでお酒を飲み、リラックスした時間を過ごすことができました。
お布団は既に敷いてくれていたので、後は寝るだけ。歯磨きは下の洗面台に用意してくれていましたが、二階にも洗面台があるので歯磨きを上に持ってきておくといいかもしれません。布団はふかふかで軽いうえに温かくとても寝心地が良かったです。
清々しい朝の美観地区風景を眺めながら優雅な朝食
朝は太陽の日差しで目が覚めました。カーテンはありますが、あえて閉めずに眠りました。歩いて3分ほどのところに8時にオープンのパン屋さんがあったため、そこでハード系のパンとチョコクリームバンなどを買って宿へ戻り、コーヒーと一緒に食べました。
ドリップコーヒーとお水、お茶は宿に用意してくれています。湯沸かし機も備わっているのでお湯も沸かせます。ドリップコーヒーをこれまた素敵なコップに注いで飲みました。コーヒーもとっても美味しくて朝から幸せでした。素敵なものに囲まれて朝から美味しいコーヒーとパン。ぜひ、朝の時間もこの宿でゆったり過ごしてほしいです。
倉敷美観地区のおすすめ周辺施設紹介
翌日はチェックアウトした後も1階の美観堂で荷物を17時まで預かってもらえます。せっかくなのでカフェでランチをしたり、神社や美術館へ行ったりすると良いでしょう。一番におすすめしたのが、大原美術館です。1930年に設立された日本最初の私立西洋美術館です。モネの睡蓮やルノワールなど、有名な西洋名画が多く展示されています。倉敷にきたら立ち寄りたいスポットに一つです。
次に大原美術館のすぐ近くにあるカフェ・エル・グレゴです。カフェの名前は大原美術館に展示されている「受胎告知」の作者エルグレコに因んで名付けられたようです。建物の外壁をアイビー(蔦)が全面を覆っており、外観が特徴のある昔から続く歴史あるお店です。レトロな店内で珈琲を飲んでみてはいかがでしょう。
お買い物を楽しみたいのであれば、倉敷駅の反対口には三井アウトレットパーク倉敷があります。家の近くにアウトレットがない人は、美観地区を楽しんだ後はお買い物をしてもいいですね。
「暮らしの宿 てまり ゆきかい」での時間はあっという間でした。普段、手しごとのものに触れる機会は少ない気がします。今回手作りだからこそ感じられる温もり、質のよさを体感することができました。ものへの感じ方も少しですが変わったように思えます。宿の方のおもてなし含め、またぜひ泊まりたいと思えるお宿でした。
【フォトギャラリー】
暮らしの宿 てまり ゆきかい
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